性行為によって罹ってしまう感染症のことを、一般的に性病と総称されます。通常、男女の性器が接触することによって感染するケースが最も多いのですが、そのほかの性行為でも感染する性病も少なからずあります。特にフェラチオと呼ばれる男性の性器を女性が口に含んで刺激する性行為が原因となって感染することは、決して珍しいことではありません。いわゆるオーラルセックスと呼ばれるこの性行為は、性器と性器が直接触れ合っていないため、性病のリスクがほぼないと思われがちですが、実際にはフェラチオで性病に感染するリスクは非常に高いのです。
フェラチオで性病に感染するのは女性だけではない
フェラチオという行為をするのは女性であることから、女性だけが性病に罹ってしまうという印象を持たれがちです。確かに、フェラチオによって性病に罹ってしまう女性が多くいるのは事実ですが、実はフェラチオをされた側の男性も性病に罹っているのです。また、フェラチオによって感染し発症するとされている性病の主な原因は、菌です。菌は粘膜に生息しているため、口腔内の粘膜から性器へと入り、フェラチオをしてもらった男性に性病をもたらします。代表的な性病としては淋病が挙げられ、喉にも感染するのが特徴です。
淋病の菌は淋菌と呼ばれ、フェラチオをした女性の喉に感染したあと、口腔の粘膜内にとどまります。淋菌を持つ女性にフェラチオをされた男性は、男性器から感染するという感染経路をたどります。その逆もまたしかりで、淋病に感染している男性の性器にフェラチオを行ったことで、女性は喉から感染してしまうというわけです。いずれにしても、フェラチオが原因で、男女ともに感染するのが淋病です。
似たような症状が出る性病
ヘルペスも、フェラチオによって感染する性病です。ヘルペスと呼ばれる病気で真っ先に思い浮かぶのは口唇ヘルペスでしょう。唇やその周辺の皮膚に小さな水膨れができる病気ですが、これはウイルスが口内に侵入することによって発症する病気です。性行為によって起こるヘルペスは性器ヘルペスと呼び、口唇ヘルペスとは区別していますが、どちらも同じヘルペスウイルスによって引き起こされるため、口唇ヘルペスを発症している女性がパートナーの男性にキスをすると、男性にも口唇ヘルペスが移ってしまうほど、感染力が強いウイルスなのが特徴です。
そのため、口唇ヘルペスを発症している女性にフェラチオをされた場合、男性は性器ヘルペスに感染してしまいます。男性から女性へと性器ヘルペスが移ることもあり、男性には亀頭に、女性には陰唇に水泡ができてきます。治療によっていったん治ったとしても、非常に再発の確率が高いのが性器ヘルペスという性病の特徴ですので、注意が必要なのは言うまでもありません。
男女ともに最大の懸念となる性病
女性にとって、フェラチオで移る性病で最も気を付ける必要があるのがHIV感染症でしょう。性病の中では最も怖い病気で、一般的にエイズという名で知られています。ただ、いきなりエイズに感染するわけではなく、最初はHIV感染症として発症します。HIV感染症の初期には風邪に似た症状が出ることから、診断が難しいのが難点です。この初期の段階でHIV感染症であることを見逃されてしまうと、症状が進み、最終的にエイズへと進行してしまいます。現代医学においてはエイズに進行してしまったHIV感染症を治す方法は確立されていませんので、フェラチオによって感染する性病の中では、最もリスクの高い恐ろしい性病と言われる理由です。女性がフェラチオによって感染するのは、すでに感染している男性の精液に含まれるウイルスが、傷の中に入り込むためです。
そのため、もし仮に感染している男性の性器を口の中に含んだとしても、女性の口の中にまったくなんの傷もなければ、感染しない可能性はあります。ただ、口の中の粘膜というのは食べものを食べるにあたって、非常に傷が付きやすいのが特徴です。ほんの少しの傷でもあれば、感染した男性の精液に含まれたHIVウイルスが傷ついた粘膜を通して体に入り込み、感染症を発症してしまうというわけです。また、口の中だけでなく、あらゆる傷口からウイルスは感染しますので、フェラチオを行った際に、唇のひび割れといった傷から感染する可能性も高いと言えます。
性器が触れ合わなければ性病にはならないという思い込みは、多くの男女の頭にありますが、実際には手で触れただけでも性病に感染するリスクは非常に高いのです。それがフェラチオとなると、性病に罹らないのが不思議と言っても良いでしょう。フェラチオなら大丈夫という安易な考えが、性病の感染リスクを上げてしまうことは明らかです。
このように、様々な性病の種類がある中、いずれもフェラチオによって女性が性病に罹ってしまうことが分かりました。また、男性もフェラチオをしてもらうことによって性病に罹るリスクがあることを考えると、少しでも性器に異常を感じたら、すぐに医療機関を受診するのが望ましいのは確かです。