セックス以外でも移る性病とは

SEX 性病について

性病(性感染症)は、セックス・オーラルセックス・アナルセックスなど性行為を介して感染する病気です。性病の原因になる病原菌は精液や膣分泌液などの体液に含まれ、性行為をして性器や口の粘膜、皮膚に体液が付着すると感染が起こります。また、傷口から血液を介して病原菌が感染することもあります。そのほか、性行為以外のきっかけで性病に感染するケースがあることも知っておかなければなりません。性行為以外で性病の感染を起こすリスクがあるのは以下の行為です。

    • 消毒不十分な針の使いまわし(注射器、刺青の刺入、ピアスの穴あけなど)
    • 皮膚同士の接触
    • タオルや衣類の接触
    • お風呂やトイレの共用

一般的な日常生活を送っていれば、感染者と性行為または感染リスクの高い行為をしない限り、性病にかかる心配は高くありません。ただ、性病にかかっている人やそのパートナーは病原菌を移さないよう、互いに注意する必要があります。性行為以外で感染することのある性病で代表的なものは、以下の病気です。

  • 膣トリコモナス症
  • 性器ヘルペス
  • 毛ジラミ
  • B型肝炎・C型肝炎
  • HIV感染症・後天性免疫不全症候群(エイズ)
膣トリコモナス症

膣トリコモナスは、トリコモナス原虫というとても小さな寄生虫が膣内に感染して発症する病気です。膣トリコモナス症は性病の中でもありふれた病気で、性行為がきっかけで感染し特に女性に多く見られますが、男性も発症し性器に症状が出ることがあります。女性がかかった場合の主な症状は、黄白色をした大量のおりものです。
時に悪臭のする泡状の分泌物が出ることや膣や外陰部の強いかゆみを伴うこともあります。男性は感染しても自覚症状がない場合も多いのですが、尿道に炎症を起こし分泌物が出ることがあります。この膣トリコモナス原虫は、お風呂、便器、タオルなどを介して家族に感染する可能性があり、性行為の経験がない女性や子どもが膣トリコモナス症にかかってしまうことがあるので注意が必要です。

性器ヘルペス

性器ヘルペスは、性器が単純ヘルペスウイルス(1型または2型)に 感染することで起こる病気です。ウイルスに感染しても、9割近くの人はすぐに症状が出ません。しかしヘルペスウイルスは一度感染すると一生体内に棲み続けるため、免疫力が低下したときに暴れだし、何度も再発するところが非常に厄介です。性器ヘルペスの主な症状は、性器にできる水疱です。
初めはかゆみを伴う小さなブツブツができ、やがて水疱ができて痛み、水疱が破れて潰瘍になった後に回復していきます。肛門周辺や唇に発症することもあります。2~4週間で自然に治癒しますが、激しい痛みや発熱を伴うことがあり、早めに抗ウイルス剤で症状を抑えることが肝心です。妊婦が感染すると産道を通して赤ちゃんがウイルスに感染する場合があります。また、潰瘍からウイルスが拡散しやすく、発症中の患者とお風呂やトイレを共用した人がウイルスに感染することもあるので、感染を広げないよう注意しなければなりません。

毛ジラミ

毛ジラミは陰毛に寄生するシラミです。1ミリほどの大きさで人の陰毛にすみついて、皮膚から血液を吸って生きています。毛ジラミを移されると、1~2ヶ月後にかゆみを感じるようになり、掻くためにかぶれや湿疹を起こすことがあります。毛ジラミは、性行為で陰毛が直接接触することで感染を起こしますが、感染者が使った衣類、タオル、毛布から家族に移すことがあるので、衛生管理に注意が必要です。また、陰毛以外にまゆ毛、体毛、頭髪に感染することもあり感染が広がると厄介なので、シラミを見つけたら徹底的に駆除することが大切です。

B型肝炎・C型肝炎

B型肝炎はB型肝炎ウイルス、C型肝炎はC型肝炎ウイルスが肝臓に感染することで起こる病気です。肝臓の病気であり、ほかの性病と違って性器に症状は出ませんが、性行為の感染リスクが高いので警鐘が鳴らされています。B型肝炎は性行為のほか、母子感染、輸血や注射を介して血液感染を起こすことで発症します。無症状のことも多いですが、発症すると発熱、倦怠感、黄疸など肝炎の症状が見られ、回復していきます。
ウイルスのキャリア(保菌者)は日本人の約1%と多くありませんが、肝硬変や肝がんに移行することがある怖い病気です。ワクチンで予防することができます。C型肝炎は、性行為のほか、消毒不十分な注射器の使いまわし、刺青の刺入で感染することが多い病気です。感染すると2~3ヶ月後に倦怠感、食欲不振などの症状が見られ、大半の人が慢性肝炎に移行します。肝硬変や肝がんに移行しやすいので、適切な治療が必要です。ワクチンはありません。

HIV感染症・後天性免疫不全症候群(エイズ)

HIV感染症は、HIVウイルスの感染者が発症する病気です。HIVに感染して数年~10年ほどは無症状ですが、その後に身体の免疫力が低下し始める後天性免疫不全症候群に移行すると、病状が進行して悪性腫瘍などを併発し、やがて死に至ります。日常生活で感染することはなく、性行為で感染します。ただ、女性が感染すると妊娠したときに母子感染を起こしてしまいます。
現在のところは根本的な治療法が見つかっておらず、HIVウイルスに感染したらウイルスを抑える薬で後天性免疫不全症候群に移行しないよう病状を維持するしかありません。以前は死亡率が高い怖い病気でしたが、治療法が進歩して延命することが可能になりました。とはいえ容易に感染しやすいので、予防と早期発見が重要であることに変わりはありません。

性行為以外から感染する性病があることを説明しました。性病のほとんどは性行為から感染しているので、日常生活に関してはあまり不安になりすぎる必要はありません。ただし、性病にかかっている人は性行為をしなくてもほかの人にウイルスを移してしまうリスクがあるので、十分に注意しましょう。性病は予防と早期発見が大切です。軽率な行動は控え「性病になったかもしれない」と気になったら、すぐ検査を受けて早く治療しましょう。

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